情報屋ジョー・シリーズ「池袋デリ嬢殺人事件」
池袋一番街、黄昏、アスファルトの日中のうんざりする照り返しがまだ冷めていない。
焼肉屋の貞子が、店前の道路に打ち水、アルミ杓子でひとつふたつ、三つ目が通行人の足元にかかった。
髪をうしろにまとめ、まだ化粧は薄いが大きな目は目立つ。
「あらっ、ごめんなさい」
素早く後ろに飛びのいた風のにおい。もしかして・・・
顔を上げて男の顔を覗く。
笑顔。日焼けした顔に白い歯。緋色の特攻服。
ポケットに手をつっこんだままだ。
「店、開ける時間だね、いいってことさ」
しんちゃんだった。
(あら、こんな早い時間に、どうしたのかしら)
「焼肉千」の二階にある事務所に緊急に呼ばれたのだ。
つづく