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松本清張の『西海道談綺』

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松本清張の西海道談綺(新聞ラテ欄表記タイトル…松本清張の西海道談綺 妻の密通は彼の運命を変えた!!日田天領に渦巻く巨悪の陰謀は!?愛憎かけめぐる一大伝奇)(西海道奇譚)

勝山藩士・惠之助(松平健)は上役・服部源左衛門と妻しづの不義を知り、源左衛門を斬り、しづもかつて働いていた鉱山に落として脱藩、天涯孤独な身の上となった。旅の途中、西国の小藩の窮地を救ったことから、茶坊主・宗全に拾われる。直参旗本の養子になった惠之助は、お山方の経験を買われ、公儀の密命を帯びて西国郡代手附として西海道(現在の九州)に向かう。

テレビ西日本開局25周年記念番組として制作された、松本清張原作の最後まで手に汗握る大型時代劇。幕府の威光届かぬ西国の地で、繰り広げられる隠し金山を巡る攻防。それに一人、挑んでいくのは松平健演じる惠之助! 大掛かりな九州ロケ(荒涼とした九州の秘境を映像化)が惠之助のドラマを盛り上げ、ラストの金山爆破シーンは圧巻の一言。
【以上、時代劇専門チャンネル広報資料より引用】【その他のクレジット表示】
協力:大分県、大分県観光協会、TDA 東亜国内航空。
【出典:ドラマ本体のクレジット表示より採録(採録:古崎康成(EDクレジットのみ))】

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《プロローグ》 西海道とは現在の九州である 当時九州は幕府の威光も遠く 群雄はいまだにその牙を失わない 謎と伝説に満ちた未踏の地であった このドラマは数奇な運命の糸に操られて 西海道に足を踏み入れた一人の男の 波乱の物語である

《ストーリー》 文化 文政の時代 作州(岡山県) 勝山藩の山方(鉱山)の藩士 伊丹恵之助(松平健)は 上司である用人 服部源左衛門(浜田寅彦)の仲人で半年前に結婚した妻(風祭ゆき)が 実は源左衛門の妾で 今もその関係が続いていることを知り 騙された! 二人とも許せない! とその日宿直を早退し 屋敷に取って返し 源左衛門を山中に待ち伏せして「刀を抜け」と迫った

―― これより先は ネタバレに注意 ――

「わしを斬ったらどういうことになるか 分っておるのか」と上司の威厳を盾にうろたえる源左衛門に 恵之助は「覚悟はできております」と頷き 容赦なく斬りかかった その足で自宅に戻り 妻 志津に「逐電」するからと伝え 耳陶山北麓の小童谷銅鉱に連れ出して 廃坑の中の竪穴へ突き落とした そして妻の持ち物すべてを燃やしたが その様子を見ている者がいた

凶状持ちとなった恵之助はあてのない旅へ 途中 木曾 奈良井宿(長野県)で 参勤交代中の小藩 福知山 森藩(京都府)の一行が大国 加賀藩(石川県)一行の我儘に苦悩しているところに遭遇し 町民の話を聞いて 一計を案じた恵之助は 土下座をしている小藩の家老 佐野廣右衛門(信 欣三)の傍へ寄り「しばらくご辛抱下さい やがて神風が吹いて参ります」と告げ 急いで藪原へ向かった

その藪原には「お茶壺道中」が滞在していた その厳重な警備を突破すると現れたのは茶壺組頭 北条宗全(丹波哲郎)「どうか お茶壺宰領殿の力を貸して頂きたい」と直訴すると その強い信念と行動力に驚かされた宗全は「お茶壺が道具に使われたのは初めてじゃ」とあきれ顔も 多勢の部下を引き連れ 恵之助を援護 森藩の危機を回避し 家老(信 欣三)の切腹も免れることになった

宗全は直感した この男は役に立つ これからも何かやってくれるくれるに違いない と通行手形もない 素性も分からない恵之助に「どうだ 江戸に来んか わしはあんたが気に入った」と救いの手を差し伸べた 行く当てのない凶状持ちの恵之助にとってこれは渡りに舟 道中一行に紛れ 宗全を頼りに未踏の都 江戸へ向かった・・・

【逐電】ちくでん 失踪 逃亡 逃げ去って行方を眩ますこと

【お先触れ】おさきぶれ 室町 江戸時代 役人や貴人が旅行する際 あらかじめ沿道の宿駅に人馬の継ぎ立てや休泊などを準備させること またはその命令書 前触れ

【福知山 森藩】 3万石の小藩 参勤交代で 塩尻から奈良井宿に向かう途中 加賀藩が奈良井宿から出発しないため行き場所を失う

【加賀藩】 加賀100万石の威光を盾に 奈良井宿から予定通り出立することを拒んでいる

【薮原】やぶはら 将軍に届けるお茶を運ぶ「お茶壺道中」が滞在している宿場

【お茶壺道中】 江戸時代に幕府が将軍家へ献上する宇治茶を運ぶ行列で 権威を示すための行事 将軍の威光により絶大な権威を誇る 加賀藩よりも遥かに格上

【北条宗全】(丹波哲郎) 表御坊主組頭 茶坊主として江戸城内で各地の大名の世話をする立場から絶大な権力を持っていた

【天下の静謐】てんかのせいひつ 天皇の命令に従って将軍が逆賊を討伐し 全国が平和な状況を指す 単に武力による鎮圧ではなく 政治的な安定と社会秩序の維持 国民の平和な生活を意味する概念

・原作 松本清張『西海道段談綺』  ところどころ 難解な語句が出てくるので字幕を付けました これなら難聴の方にもお分かり頂けるかと思いまして また本作品は1983年製作


​《ストーリー》 江戸に着いた恵之助(松平健)は 宗全(丹波哲郎)から「面白ところに案内しよう」と誘われ 付いて行くとそこは博打場だった その途中上意討ちに遭う 追っ手は すでに江戸にまで及んでいたが 持ち前の剣術で追い払うと そこに現れたのは柳橋の船宿「上総屋」の芸妓 梅香(おえん、古手川祐子) 初対面だったが 互いにどこか惹かれ合うものを感じていた

―― これより先は ネタバレに注意 ――

その日の宗全はツキがなかった 備前屋(小沢象)との勝負に負けて100両の手持ちが8両になってしまい ならばと 駄目元で博打を知らない恵之助に勝負を託した するとここから流れが一変し 最後は備前屋との差し勝負にも勝って まさかの捲り 宗全の懐に元手の倍のカネが転がり込んできた

これで上機嫌となった宗全は おえんに「あいつは天涯孤な身の上だ しばし慰めてやれ」と申し付け 一夜を共にした恵之助だったが おえんは自分が凶状持ちであることを知らない その後ろめたさもあって 今一歩近付けない おえんはそれを歯がゆいと感じていた

翌日 恵之助は宗全から養子縁組を持ち掛けられた 相手は180石 小普請組 太田半左衛門 持参金は400両だが博打で勝った200両に 差額200両は宗全が出すという 数日後 勘定奉行 長谷川和泉守より辞令の書付けを手渡された恵之助は 小普請組旗本 その姓も太田へと変わり これにより凶状持ちの伊丹恵之助という名はこの世から消え去った

宗全には狙いがあった これはご公儀のため 是非とも山に詳しい恵之助の力が借りたいと 勤務地は西海道 豊後の日田地域で 郡代屋敷に出役して殺害された手付鈴木の疑惑を晴らすこと もう一つは 長崎のオランダ商人たちに我が国の金が流れているらしいが ご公儀の目の届かない隠し金山があるに違いない 殺された鈴木は 豊前豊後あたりと目星を付けたようだが それは一体どこなのか

恵之助は覚悟を決めて 若党嘉助(三波豊和)とともに大阪から瀬戸内海を経て遠路九州へ向かった 途中 旅の垢を落そうと湯山(熊本県)の露天風呂で体を休めていると 昔馴染みの振矩師 甚兵衛(中村敦夫)にばったり出会い 恵之助は 訳あってもう勝山藩士ではないと漏らすと 甚兵衛もまた ここへは仕事ではなく湯治のために来ていると打ち明け 恵之助が部屋に戻ると 廊下から甚兵衛の座敷に白髪の女の姿が見えた

ようやく目的地の西国郡代に着いた恵之助は 上司となる日田郡代の高林伝七郎(小泉博)を訪れ 恵之助と同役の公事方手付けの向井平三郎(宮内洋) 直属の部下となる浜島孝介(島田順司)らを紹介され 早速 日田七軒衆(札差)から招待があるようだと告げられたが それよりも鈴木が殺された四日市に行ってみたいと言ったとたんに場の空気が一変した そしてその道案内として公事方書役 村上平八(狩野勝行)が自ら名乗り出た

【養子縁組】ようしえんぐみ 江戸時代における養子縁組は 家制度の維持 家業の承継 相続などの目的で広く行われていた

【振矩師】ふりがねし 鉱山の間切 切山 煙貫きなどの工事に当たる 鉱山付測量技術者

【札差】ふださし 江戸時代に幕府から旗本 御家人に支給される米の仲介を業とした者

【若党】わかとう 江戸時代 足軽よりも上位の小身の従者


​《ストーリー》 日田郡代 公事方手付けとなった恵之助は 部下の公事方書役 村上平八(狩野勝行)の案内で 前任者 鈴木九郎右衛門が殺害された現場を確認するため 日田から豊前四日市に向かった その途中 森の中に ほら貝の音が鳴り響き「宇佐石体権現」という上りを持った山伏集団の行列が現れ 数人がかりで重そうにつづらを担いでいた

―― これより先は ネタバレに注意 ――

森藩の城下に入り 恵之助が馬継ぎをしていると 奈良井宿で手助けした佐野寛右衛門が出迎えてくれて「もしお困りになりましたら 老骨の命に代えてお力添えを致します」と言葉をかけてくれた 一服した後 村上はこの先の道中は小者に任せて 自分は陣屋の準備もあるので一足先に四日市に参りますと言い残し 馬を走らせた

四日市陣屋は手代の吉田孫六(堀礼文)が取り仕切っていた 翌日 殺害現場を案内した吉田は 殺された鈴木は鎌で背中をめった切りにされていたと ならば下手人は百姓か いや安易にそうとも言えないが その直後 嘉助が「だっだっ!旦那っ!」と大声で叫んだ 急いで駆け付けてみると 昨日一足先に出発したはずの村上の死体がそこに 無残にも首を切られ 手には粗金を握っていて 犠牲者はこれで二人目となった

数日後 恵之助は 屋形船で日田七軒衆と顔合わせをした その席で浜島孝介(島田順司)から「代官所と掛屋の旦那衆とは持ちつ持たれつでいいじゃありませんか?」と暗に同意を求められ 「日田の掛屋は江戸にも付き合いがありまして 気まぐれな夜風が隅田川の匂いを運んでくることもあります」と言われ そのほうへ目を向けると 向いの舟には何とおえん(古手川祐子)が乗っていた 

おえんは一人旅ではなく 以前 恵之助が 柳橋の上総屋で博打勝負をした備前屋(小沢象)には 日田の掛屋とも付き合いがあり 今度も取引があるというのでご一緒させて頂いたという その話を聞いて あの備前屋が 遠く日田の地にまで商売の手を伸ばしていたのかと 見えない糸で繋がれた組織を見るような思いがした

恵之助は 殺された村上が握っていた粗金を調べるため 肥後峯尾鉱山に 旧知の振矩師 甚兵衛(中村敦夫)を訪ねた すると これは花吹黄金 混じり気なしの本物の金だと言う 何故それを村上が握っていたのか そこが知りたい これは私の職務だ 力を貸してくれ と恵之助が訴えると 甚兵衛もまた 今は身動きがとれない よんどころのない事情で一人預かっているのでと 申し訳なさそうに それは湯山の温泉宿で見掛けたあの女のことか ならば心配するな 手助けしてくれる人がいる と恵之助が助け船を出した

しばらくして浜島(島田順司)から 鈴木 村上を殺害した容疑者を検挙したとの報告があり 捕らえたのは四日市陣屋の吉田で 犯人は百姓の源次 金を持っていそうな武家を鎌で殺した それが鈴木であり 村上であったと 吟味をしたのは向井(宮内洋)で 一切の書類は整っている 陣屋に手落ちはないとの報告に 何かでき過ぎているとは思いませんか? と浜島は納得のいかない様子 恵之助はすぐに嘉助を呼んで 犯人の源次を捕らえた現場に出向いて この一件の裏を取ってくれと頼んだ

甚兵衛(中村敦夫)は 恵之助の計らいで 連れてきたお島(風祭ゆき)をおえんに任せて 自分は恵之助の手助けをしなくちゃならないので と言い残してその場を去り 嘉助は津江筋へ事件調査に向かった しかし下手人らしき者を見たという人はおらず 西山には 時々どこからか人が来て死人を埋めて帰るという噂もあり 多い時で5,6人 よく山伏のほら貝の音が聞こえてくるという 結局 嘉助は何の手掛かりも得られないまま帰途に着く羽目となり 不運にも途中の山道で落石に遭い 川へ転落して流されてしまう 

一方 おえんは お島の世話をするうちに向井の目に留まり しつこく迫られるが 秀観(刈谷俊介)に見つかり 如何にも性急過ぎると 格下からたしなめられる 宿へ戻ったおえんは お島から「太田恵之助という方と一緒になるんですか」と聞かれ「分かりません でも江戸に帰ったら あと3年経ったら 私はそう信じています」と嬉しそうに答えると しだいにお島の表情が曇ってきた おえんはまだ お島の本当の姿を知らないようだ

【つづら】 衣服を入れる編みかご ツヅラフジで編む 竹やひのきの薄板を編み 紙をはったのもある

【馬継ぎ】うまつぎ 宿場で馬を乗り換えること またはその場所 江戸時代には、宿場に駅馬(継ぎ馬)が用意され 旅人が乗り継いで移動していた

【振矩師】ふりがねし 鉱山の間切 切山 煙貫きなどの工事に当たる 鉱山付測量技術者


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