北の国から 2002遺言
蛍は総合病院で看護師として働きながら一人息子の快を育てていた。草太の牧場を継いだ純と正吉だったが、2年前に破綻し、借金を分担して別々に富良野を出て行っていた。五郎は快を保育園に迎えに行き、石の家に連れて行って遊ぶのを楽しみしていたが、勝手に連れて行くなと蛍は怒る。雪子の元に大介がやってくる。雪子の家は五郎が廃棄物を資材にして建てたものだった。しかし大介は関心を示さず、雪子や五郎と話もしないで携帯電話のチャットを続けるばかり。中畑の娘すみえが婚約者を連れて帰ってくる。婚約者の清水は北大卒のエリートだが、五郎が廃棄物で家を建てていることに感銘し、すみえとの新居を五郎に建ててほしいと言い出す。五郎が清水の提案した糞で発電する装置の設計をしているとシュウが現れる。純が一番苦しい時にそばにいてやれなかったことを悔いるシュウだったが、神戸に嫁ぐことが決まり、純への別れの手紙を五郎に託して帰っていく。それを見送った五郎は腹痛で倒れこんでしまう。 純は羅臼で廃棄物処理の仕事に就いている。同僚の寅ちゃんと漁師のタクちゃんに親切にされ、浜の番屋にただで住まわせてもらっている。タクちゃんが時々家に呼んでくれることが却って純に孤独を感じさせ、家族が欲しいと思うようになっていた。鮭の遡上を見に行った純はそこで麓郷の分校で習った涼子先生に再会する。次の日曜日、涼子先生を訪ねるともう一人の教え子が招かれている。それは数日前漁港で顔を合わせたことのある結だった。その日をきっかけに純は結と付き合い始めるが、寅ちゃんとタクちゃんに結は人妻であり、夫の父の高村がトド撃ちの名人で気性の荒い人なので付き合いをやめるように言われる。 五郎は病院の検査予約をすっぽかす。蛍に検査を受けるまで快に会わせないと言われ、五郎はしぶしぶ病院に行くが、検査を重ねるにつれて自分が不治の病なのではないかと不安に襲われるようになる。病院には純の借金を肩代わりした三沢の爺さんが入院している。その家族から蛍は純が借金を返済していないことを責められ、ひたすら詫びるしかない。疲れ切って家に戻ると快がいない。パニックになった蛍は110番に電話するが、快は空の浴槽に隠れて眠ってしまっていた。五郎が教えたせいだと蛍は責め、純が借金を返済していないことで怒りを五郎にぶつけてしまう。五郎から手紙をもらった純だが、毎月の返済額と同じぐらい携帯の通信代にかけている自分を情けなく思う。純は結と会うのを避けていたが、早朝に結が番屋を訪ね、身の上を話して聞かせる。両親を亡くした結の父親代わりの高村は結にふさわしい男ができたら籍を抜くと言っており、純に結婚するつもりで付き合ってくれているかと聞く。翌日海岸に湧き出した野天温泉に呼び出された純は高村に身辺を問いただされる。中畑の妻のみずえが検査のため入院し、蛍に夢で見た五郎の廃棄物で作った家が並ぶ「拾ってきた町」の話をする。すみえの家の建設現場では携帯の出会い系サイトで知り合った女性を待つという大介とそれが理解できない五郎が言い合いになっていた。激高した中畑は大介を殴り飛ばし、携帯電話を川に投げ込んでしまう。五郎が声をかけると中畑はみずえのガンが再発し、余命が長くなく、急いですみえの家を建ててほしいと涙ながらに頼むのだった。 10月蛍の夜勤の日、救急車でみずえが運ばれてくる。主治医はがんが再発して深刻であることを蛍に告げる。新吉から遺言状を書くことを勧められた五郎は中学校の元校長である山下先生に入門する。謝礼を免除する代わりに自分を廃棄物の家作りの仲間に入れてほしいと山下は頼む。麓郷の人たちは1日でも早くすみえの家を完成させるべく協力してくれる。ある日、現場に高村が現れるが、中畑の知り合いだと勘違いした五郎は作業を手伝わせてしまう。夕方になり、高村が観光客だと知ると五郎は恐縮して詫びるが、高村は五郎を凄い人だと賞賛する。五郎は高村を石の家に泊め、酒を酌み交わしながら、純の不運を嘆く。羅臼に戻った高村は純に五郎を呼んで流氷を見せてやれと命令する。羅臼の港が流氷に覆われる頃、結の夫・弘が番屋に現れ、不良仲間と共に純を袋叩きにする。駆け付けた高村は弘を殴り飛ばし、純には他人の嫁を奪いたければ少しは戦えとはっぱをかける。番屋に駆け付けた結に純はもう逃げ回ってばかりの自分を終わりにするため弘に会いに行くと言い、結は猟銃を手に付いていく。不良仲間の家で結が銃口を向ける中、純は土下座して結と結婚させてくれと弘に頼み込む。 数日後、五郎が羅臼にやってきた。五郎は三沢の爺さんが寝たきりになったことを知らせる。純はこれまで借金の返済をさぼっていたことを恥じ、これからは逃げずにやっていくことを誓う。そして結と結婚したいと話すが、結が人妻だと聞いて五郎は態度をかたくなにする。翌朝、結が番屋に駆け込んでくる。高村がトドを狩りに行ったまま戻らないという。高村の遭難はテレビでも報じられ、港では迎え火の焚火が夜通し焚かれる。駆け付けた涼子先生は五郎に結は離婚しているのと同じだと説明する。純と弘は2人で夜通し迎え火の番をしながら語り合い、結を純に譲ると言う。翌朝純と弘は港を埋め尽くした流氷の上を歩く高村の姿を見つける。歓喜して迎える港の人々を押し分けて高村は五郎に歩み寄り、よく参られたと歓迎する。高村の無事を祝う宴会に純と五郎も呼ばれるが、その最中富良野からみずえの訃報を伝える電話がかかる。 純は2年ぶりに富良野に戻る。純は五郎が廃棄物で作った雪子の家に感嘆する。中畑は隣に完成したすみえの家で一人泣いていた。死の直前中畑は病院からみずえを連れ出し家を見に来たことを話し、五郎に感謝する。蛍の家に泊まった純は富良野に戻って借金のことをきちんとすること、結とのことを話す。仕事もないのに結婚すると言う純に蛍は呆れるが、五郎流にやって行けば生きていけると言う。翌日純は三沢の爺さんを訪ねて土下座するが、爺さんはよく帰ってきたと喜ぶ。純は爺さんの下の世話をし、その後も時々三沢家を訪れて爺さんの世話をすることにする。純は市内を歩く結を見かける。結は富良野の生活環境を確認していた。神社で再会した2人は身を寄せ合って五郎の家に向かう。蛍の所に正吉からの手紙が届く。手紙には住所が書かれていた。五郎の家に駆け付けた蛍は純と結と共に賑やかに夜を過ごす。皆が寝静まった真夜中、蛍は五郎に正吉の所に行くことを告げる。五郎は理解しながらも快との別れを悲しみ、遺言状の下書きを涙で濡らしてしまう。3月下旬、蛍は富良野駅から列車に乗り込んだ。扉が閉まると五郎は快の名前を呼びながら列車を追いかけて走り出す。駅員の静止を振り切って線路沿いを走る五郎はいつしか蛍の名を呼んでいた。 五郎は遺言状を書きあげる。「遺せるものは何もない。自然から頂戴しろ」
北の国から2002 遺言 前編、後編(「21年、あたたかいご声援ありがとうございました」)
五郎の病気、純の新たな恋、夫に出ていかれた蛍の悲しみのほか、一家と親しい人の死など激動のストーリーが展開するシリーズ最終作。後編の放送枠は、土曜20:03~23:09。吉岡秀隆と内田有紀は本作での共演が縁で後に結婚した(後に離婚)。協力:富良野市(1)(2)、羅臼町(1)(2)、北海道文化放送(1)(2)、日本エアシステム(1)(2)、新富良野プリンスホテル(1)(2)、北海道旅客鉄道(1)(2)。【出典:ドラマ本体のクレジット表示より採録(採録:古崎康成)】《16:9》