■なら!また、減額できる別の方法を模索、実施
最高裁で「違法判決」なのに、なぜ「生活保護を2.49%引き下げ」できるのか? #エキスパートトピ
今野晴貴 雇用・労働政策研究者
今年6月、2013年からの生活保護費の最大10%引き下げに対する違法判決が最高裁で出されたのに対し、厚労省は専門委の意見をもとに、違法とされた引き下げ方法とは別の手法で、2.49%減額する方針を固めた。
生活保護費引き下げの手法として、物価の下落率を考慮した「デフレ調整」と、生活保護世帯と一般の低所得世帯の消費実態を比較する「ゆがみ調整」の二つがあり、最高裁判決は前者のみ違法とした。その点を利用し、厚労省は「ゆがみ調整」のみを反映し、2.49%引き下げる見込みだが、これには大きな問題がある。
今回の政府の対応にはいくつもの問題が指摘できる。まず、今回の生活保護引き下げ訴訟については、判決から4ヶ月以上が経過してからようやく謝罪がなされ、賠償に至っては一部の引き下げを認めた上での金額となる点だ。今回と類似のケースとして、昨年7月に旧優生保護法についての最高裁違憲判決が出た際には、判決後すぐに謝罪と賠償が進められた。
また、今回の判決でも温存され引き下げの根拠となる「ゆがみ調整」とは、所得下位10%との比較を行う「水準均衡方式」を指す。だが、現状では生活保護の捕捉率(生活保護基準を満たしている者のうち、実際に保護を受けている者の割合)は2割程度であり、所得下位10%層には生活保護以下の生活に耐えている世帯が多く含まれる。例えば、国民年金だけ受給し貯蓄を切り崩して生活している世帯などだ。そうした層と比較をすると、生活保護基準を際限なく引き下げることになってしまうのである。
さらに、生活保護基準は最低賃金や住民税非課税、国民健康保険料減免、就学援助などの様々な制度に連動している重要な「ナショナル・ミニマム」である。そのため、生活保護を切り下げると、その他の人々の生活も切り下げられてしまう構図なのだ。
2025/11/25
国が2013~15年に実施した生活保護費の減額処分を違法として取り消した最高裁判決を巡り、厚生労働省は21日、政府の対応策を公表した。判決で違法とされた引き下げ方法とは別の手法で2・49%の減額調整を再度実施した上で、過去の減額分との差額を支払う。訴訟の原告については負担に配慮し、新たな減額調整分を「特別給付金」として別途積み増して給付する。このため、原告とそれ以外の追加支給額に差が出ることになる。
生活保護費引き下げ違法判決 約300万世帯に追加給付へ 厚労省 2025年11月22日午前6時15分NHK 厚生労働省 生活保護の支給額の引き下げを違法とした判決への対応策をめぐり、厚生労働省は、違法とされた「デフレ調整」による引き下げ分については、原告に全額を支給する一方、それ以外の受給者は再設定した水準との差額を給付する方針を決めました。
2025年6月、最高裁判所は厚生労働省が2013年から3年にわたって生活保護の支給額を段階的に引き下げたことについて専門家の審議を経ないなど、判断の過程に誤りがあり、違法だとして引き下げの処分を取り消しました。
厚生労働省は専門家委員会を設置して対応を検討してきましたが、違法とされた物価の下落に基づいた「デフレ調整」については、改定率を再設定する方針を決めました。
当時のすべての受給者に対し、一般の低所得世帯の消費実態に基づいてマイナス4.78%だった改定率をマイナス2.49%に再設定し、差額を追加給付します。
このうち、原告については、裁判の争いを繰り返さない観点などから「特別給付金」を加えることで、引き下げ分の全額を支給することを決めました。
一方で、判決で違法とされなかった、年齢や世帯人数などの不均衡を是正する「ゆがみ調整」については、原告も含めて追加給付を行わないことにしています。
厚生労働省によりますと、支給される額は、年齢や住んでいる地域、生活保護の受給期間などで異なりますが、1世帯当たりでは、▽およそ700人いる原告は20万円ほど、▽原告以外はおよそ10万円と試算されています。
追加給付の対象は、合わせておよそ300万世帯、金額は2000億円前後になる見込みで、厚生労働省は必要な費用を2025年度の補正予算案などに盛り込むことにしています。
原告弁護団 撤回や被害の完全回復求める 厚生労働省が対応策を公表したことを受け、集団訴訟の原告の弁護団は緊急声明を出し、「司法軽視もはなはだしい」として、撤回や被害の完全回復を求めました。
声明ではまず、「訴訟の敗者である厚生労働省が主導して専門家委員会を開催してきた目的が、最高裁判決の意義をわい小化し、被害回復額を値切ることにあったことが明らかとなった」としています。
そして、減額された分を全額補償しないことは許されないとして、「最高裁によって支給額引き下げの判断が違法だと断罪されたのに、厚生労働省は同様の過ちを犯そうとしている。司法軽視もはなはだしく、三権分立や法の支配を揺るがすものだ」と批判しています。
その上で、対応策の速やかな撤回と謝罪、それに被害の完全回復を求めました。