#author("2025-12-02T15:13:57+09:00","","")
#author("2025-12-02T15:19:59+09:00","","")
[[生保/20251121 生活保護費追加給付]]

*宇賀克也理論 [#o3cd1368]

#ref(s.jpg)


毎日引けるくじ 今すぐ挑戦
ログイン
生活保護基準引き下げ「違法」…国の“敗訴”判決を下した最高裁“元裁判長”宇賀克也氏が語る「内幕」とは?
199
コメント199件

12/1(月) 10:20配信


弁護士JPニュース
宇賀克也元最高裁判事(東京大学名誉教授)

2025年6月27日、最高裁第三小法廷は、生活保護受給者らが2013年の生活保護基準引き下げの取り消しを求めた集団訴訟において、裁判の進行が最も速かった愛知県および大阪府の原告団に対して、厚生労働大臣による引き下げの違法性を認め、国に保護費の減額処分の取り消しを命じる判決を言い渡した。

【イラスト解説】生活保護を受給するのに必要な「3つの条件」とは

裁判長を務めた宇賀克也氏は、7月に最高裁を定年退職し、講演会などの活動を精力的に行っている。宇賀氏は東京大学名誉教授であり、行政法学界の権威とされる研究者でもある。

本記事では、11月7日に日弁連が東京都内で主催した「生活保護行政に対する司法審査に関する講演会」で宇賀氏が語った内容を紹介する。

講演会の趣旨は、生活保護行政に対する司法審査の在り方と「行政裁量」という重要な概念について、宇賀氏の知見から学ぶことである。(みわ よしこ)

「申請主義」の壁…行政が制度を周知徹底しないことの問題点
会場には、生活保護制度の利用者・支援者・社会福祉学者などの姿もあったが、過半数は弁護士であるようだった。受講者たちの関心事である「最高裁判決が判決どおりに実現されるためには、どこにどう働きかければ有効なのか?」といったことに関しては、冒頭で司会者が「退官後も守秘義務があるので一切答えられない」と釘を刺した。

宇賀氏は穏やかな表情と明るい声で、「弁護士の役割」、ついで、生活保護をはじめとする「給付行政」で、対象となる人が制度を知って申請しなければ給付を受けられないという「申請主義」の問題点について語り始めた。

私は違和感を覚えた。たしかに、制度の情報にたどりつけないために、あるいは手続きを自力で行うことができないために、利用できるはずの制度を利用できない人々は少なくない。その人々が、貧しさや困難の中に放置されがちである状況は、「社会正義」に反している。

しかし、講演会のテーマは、「生活保護行政に対する司法審査」ではないのか? それをさしおいて「弁護士の役割」「申請主義」について説明することには、どのような意図があるのか。

宇賀氏は淀みなく、児童扶養手当に関する「永井訴訟」京都地裁判決(平成3年(1991年)2月5日)について語り始めた。

障害者の夫とともに子どもを育てていた女性が、受給権があることに気づかなかったために申請と受給開始時期が遅れ、受給できる児童扶養手当の総額が減少したことを理由に、「国が制度に関する周知を徹底する義務を怠った」として損害賠償を求めた訴訟である。

一審の京都地裁判決は、国が周知徹底義務を怠ったとして国家賠償法上の損害賠償請求を認めた。

これに対し控訴審の大阪高裁は「(周知は国の)責務ではあっても法的な義務ではない」とし、原告敗訴の判決を行った。しかし、判決理由中で「水際作戦」のように制度の利用を阻む行為は「裁量範囲の著しい逸脱」と判示した(平成5年(1993年)10月5日)。

この判決を紹介しつつ、宇賀氏は、憲法と児童扶養手当法の関係を示した。児童扶養手当法の目的は「児童扶養手当を支給し、もつて児童の福祉の増進を図ること」である(同法1条)。

しかし、制度が利用できることを知らなければ申請できず、申請しなければ受給権は発生しない(同法6条参照)。このため、周知を徹底しないことは生存権が保障されていないことになるという判断がなされたのだった。

----


「行政の制度ではないから知らせなくていい」というわけではない
さらに宇賀氏は、身体障害者の運賃割引が介助者にも適用されることを自治体が周知しなかったために損害を受けたとして提起された訴訟を紹介した。簡裁(勝訴)・地裁(敗訴)を経て、東京高裁は2009年に原告の訴えを認める判断を示し(平成21年(2009年)9月30日)、この判決が確定した。

運賃割引制度は、各公共交通事業者が独自に提供しているものであり、行政の制度ではない。しかし、憲法13条に定められた「移動の自由」は、障害者にも保障されるべきものであり、割引制度は移動の自由を実質的に確保するために設けられた手段である。

介助を常時必要とする障害者にとって、介助者に運賃割引が適用されるか否かは、自分自身の移動の自由にかかわる問題である。このため、障害者自立支援法(当時)は、市町村には必要な情報の提供を行う責務があるとしていた。

しかし当該の自治体は、介助者の運賃割引に関する明示的な説明をしておらず、障害者福祉制度の説明冊子においても明確な記載をしていなかった。

判決では、これら関連する法律の解釈から、「市が割引制度に関する説明をしていたとは認められない」と判断された。

「この事件の話は、今年6月の最高裁判決に関する話の前振りに違いない」と期待していると、宇賀氏は、またしても話題を変えた。

行政手続法の制定で無効化されたはずの「水際作戦」
次の話題は、「あるべき情報提供と給付の姿」であった。

宇賀氏は、行政が家族手当の対象者を調べて申請を経ずに給付しているオーストリアの例、千葉市が独自に行っているプッシュ型情報提供(市民自身が利用申請を行うことが前提)の例を挙げ、「プッシュ型情報提供・プッシュ型給付は、『申請不要』という意味では望ましい」と述べた。

その対極にあるのが、「水際作戦」だ。しかし、行政手続法7条は「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければ」ならないと定めている。

「申請を受理したら」ではない。まして、申請書が到達しているのに「受け取っていない」と主張することはできない。むろん、水際作戦でしばしば見られる「受理しない」という対応も許されない。

審査においては、最初に期間・事項・添付書類などの形式的要件を確認するが、補正を認めることが必要とされている。言い換えれば、記入漏れや添付漏れがあった場合に「無効」としてはならないということだ。

これらの規定の背景には、過去に申請の「受付」と「受理」を区別する運用が存在し、さらに裁量によって「指導に従わないのなら受理しない」という運用もなされていたことがあった。

このため、行政の透明性を高める目的で1993年に行政手続法が制定された際(1994年施行)、申請書が申請先に到達した時点で審査義務が発生するとされ、「言い訳はできないよ」ということが明確に示されたのである。ところが生活保護においては、その後も「水際作戦」が頻発しているという。

宇賀氏は、話題を少しひねりつつ共通認識の範囲を広げ、ついで生活保護に着地させた。巧妙な構成と軽妙な語りには、もう魅了されるしかない。

----
だ。

また宇賀氏は、「委任命令」(※)の限界を逸脱しているという問題も指摘した。児童扶養手当法の施行にあたっては、障害年金との併給に関する規定を含め、「委任命令」である政令によって定められている。

※法規範は国会の立法により法律という形式で定めなければならないという「国会中心立法の原則」(憲法41条)に基づき、法律が一定の事項に関し委任する下位規範(政令、省令等)

そして、一人親世帯に対して不利益となる扱いは、「平等原則に違反する委任」であり、かつ「財政を理由とした委任」であるため、法の趣旨に反し、委任命令の限界を超え、認められないという。財政を理由とした委任は、まさに2013年の生活扶助基準改正において行われたものである。

----

る。

宇賀氏によれば、現在の通説では「国内的にも効力がある」ということだ。2015年、老齢加算に関する大阪高裁(兵庫事件)判決(平成27年(2015年)12月25日)においても、社会権規約が制度の後退を禁止していることに関する国の責任が判示された。

結局のところ、憲法25条の意味するところは、社会権規約2条1項と同一ということになる。すなわち、「生活保護世帯の生活レベルを引き下げることは禁止」なのだ。

----

されてきている水準均衡方式では、物価ではなく消費水準に注目しているのに、物価に注目すること
・指標として「物価」を使用する方法が水準均衡方式より好ましい方法であるという合理的理由を国が示せなかったこと
・参照する対象を「一般国民」ではなく「一般低所得世帯」としたこと
・総務省の物価指数(CPI)ではなく厚生労働省が独自に開発した物価指数「生活扶助相当CPI」を使用したこと
・「ゆがみ調整」「デフレ調整」を使用したこと

このため、宇賀氏らは「合理性がない」と判断し、原告勝訴とする判決を示した。

しかし、原告が請求していた国家賠償は認められなかった。国が引き下げを実施するにあたり、検討方法には多数の問題があり「過失があった」とは言えるが、引き下げを検討すること自体が違法というわけではないからである。

ただし宇賀氏自身は「精神的損害に対する損害賠償を認めてよい」と考え、判決の少数意見にその旨を明記した。

----

最高裁内部の健全化にも尽力した6年間
宇賀氏は2019年から2025年までの6年間にわたって最高裁判事を務めたが、在任中は最高裁のあり方をより健全にすることにも尽力したという。

上告理由の提示に対して判断しない「不受理」とする場合、反対する判事がいても、「全員一致で不受理」と表示する慣行があった。「全員一致」なのであるから、少数意見を書くこともできない。メディアが「全員一致で不受理」と報道するため、誤解も広まってしまう。

宇賀氏は着任後、問題提起した。結果として、第三小法廷では「不受理に反対の裁判官がいた」ということを判決文に示すことが可能になった。しかし、反対理由は書けないままである。宇賀氏は、「一人でも反対なら、受理して反対意見を述べる機会が必要ではないか」という。

憲法改定の可能性が具体的に取り沙汰される昨今、民主主義の危機や形骸化は、町内会から政府まで至るところにある。最高裁も例外ではない。とはいえ、あらゆる場面で、手の届く範囲で民主主義を健全に維持する努力が続けられれば、民主主義は簡単に息を吹き返すものかもしれない。


■みわ よしこ
フリーランスライター。博士(学術)。著書は『生活保護制度の政策決定 「自立支援」に翻弄されるセーフティネット』(日本評論社、2023年)、『いちばんやさしいアルゴリズムの本』(永島孝との共著、技術評論社、2013年)など。

東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了。立命館大学大学院博士課程修了。ICT技術者・企業内研究者などを経験した後、2000年より、著述業にほぼ専念。その後、中途障害者となったことから、社会問題、教育、科学、技術など、幅広い関心対象を持つようになった。

2014年、貧困ジャーナリズム大賞を受賞。2023年、生活保護制度の政策決定に関する研究で博士の学位を授与され、現在は災害被災地の復興における社会保障給付の役割を研究。また2014年より、国連等での国際人権活動を継続している。

日本科学技術ジャーナリスト会議理事、立命館大学客員協力研究員。約40年にわたり、保護猫と暮らし続ける愛猫家。






トップ   編集 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS