非常識刑法講座

医師法

医師法第19条第1項では「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合、正当な事由がなければ拒んではいけない」旨が規定されています

医師法第19条第1項および歯科医師法19条1項
診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
—医師法第19条第1項
診療に従事する歯科医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
—歯科医師法19条第1項

応召義務に関する裁判例

神戸地裁平成4年6月30日判決(1) 【事実の概要】 • 神戸市にて交通事故に遭い、両側肺挫傷・右気管支断裂の傷害を受け、救急車で搬送された患者A(20歳)につい て、消防が神戸市の病院(第3次救急医療機関)へ搬送を依頼したところ、脳外科医と整形外科医が不在であるた め対応できない(実際は宅直)との返答があり、隣接の西宮市の病院(神戸市の第3次救急医療機関に匹敵)に収 容、ただちに応急処置・手術が施されたが、前記受傷に起因する呼吸不全により死亡するに至った。 • これに対し、患者の相続人ら(5名)が、神戸市の病院の診療拒否により患者は適切な医療を受けるという法的利 益を侵害され、精神的苦痛等を被ったとして、同病院の開設者である神戸市に対し、不法行為を理由に損害賠償を 請求。診療拒否について正当事由の存在が認められないとして、精神的損害について不法行為に基づく損害賠償責 任が認められた事例。(200万円の請求に対し、150万円が認容) 【判旨】 • 「右規定(注:医師法19条1項)は、医師の応招義務を規定したものと解されるところ、同応招義務は直接には公 法上の義務であり、したがって、医師が診療を拒否した場合でも、それが直ちに民事上の責任に結びつくものでは ないというべきである。しかしながら、右法条項の文言内容からすれば、右応招義務は患者保護の側面をも有する と解されるから、医師が診療を拒否して患者に損害を与えた場合には、当該医師に過失があるという一応の推定が なされ、同医師において同診療拒否を正当ならしめる事由の存在、すなわち、この正当事由に該当する具体的事実 を主張・立証しないかぎり、同医師は患者の被った損害を賠償すべき責任を負うと解するのが相当」。 • 「また、病院は、医師が公衆又は特定多数人のため、医業をなす場所であり、傷病者が科学的で且つ適切な診療を 受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、且つ、運営されるものでなければならない (医療法一条の二第一項(注:現行医療法一条の五第一項))故、病院も、医師と同様の診療義務を負うと解する のが相当である。しかして、病院所属の医師が診察拒否をした場合、右診療拒否は当該病院の診療拒否となり、右 一応推定される過失も右病院の過失になると解するのが相当である。蓋し、右診療拒否は、当該病院における組織 活動全体の問題であり、ここで間題にされる過失は、いわば組織上の過失だからである」。 • 「被告病院の所属医師、ひいては被告病院は、右説示にかかる診療義務(応招義務)を有しているのであるから、 被告病院の所属医師が診療を拒否して患者に損害を与えた場合には、被告病院に過失があるという一応の推定がな され、同病院は、右説示にかかる診療拒否を正当ならしめる事由の存在、すなわち、この正当事由に該当する具体 的事実を主張・立証しないかぎり、患者の被った損害を賠償すべき責任を負うと解するのが相当」。 9 応召義務に関する裁判例① • 「被告は、右救急医療体制に基づき本件事件当時亡Aを受入れ得たのは被告病院のみではなかつた故、同病院が 同人を受け入れなかつたことに正当事由がある旨の主張をしている。……当該患者に対し、当時必要とした直近 の救急医療機関は、第三次救急医療機関であったところ、右第三次救急医療機関として亡Aを収容し得る医療機 関は、右二病院に限られていたというべきである。……いかに神戸市内における救急医療体制が当時整備充実さ れていたとはいえ、右医療体制内において第三次救急医療機関である被告病院が神戸市内における第一次、第二 次救急医療機関の存在をもって本件診療拒否の正当理由とすることは、できないというべきである。……同人の 西宮病院、兵庫医科大学付属病院(注:神戸市の第3次救急医療機関に匹敵)への搬送は次善というべく、した がって、本件においては、西宮病院、兵庫医科大学付属病院の存在も、右説示を左右するに至らない」。 • 「被告は、右認定にかかる被告病院における本件夜間救急体制及びその具体的状況に基づき右夜間救急担当医師 が診察中であつたから本件診療拒否には正当理由がある旨の主張をする。確かに、医師が診療中であること、特 に当該医師が手術中であることは、診療拒否を正当ならしめる事由の一つになり得ると解される。しかしながら、 本件では、被告において、本件夜間救急担当の前記医師一一名が本件連絡時具体的にいかなる診療に従事してい たのか、特に、亡Aの本件受傷と密接に関連する診療科目である外科の専門医師は当時いかなる診療に従事して いたのか、本件受付担当者が本件連絡を受理しこれを伝えた医師はどの診療科目担当の医師で、同医師は当時い かなる診療に従事していたのか……等について、具体的な主張・立証をしない」。 • 「被告は、・・・・・・右脳外科医師及び整形外科医師が本件連絡時宅直で在院せず、右両医師の亡Aに対する直接対 応できなかつたことに基づき、被告病院の本件診療拒否に正当事由があつた旨の主張をする。確かに、担当医師 不在は、場合によって診療拒否の正当理由となり得ると解される。しかしながら、本件においては、亡Aの本件 受傷と密接な関連を有する外科専門医師が本件連絡時本件夜間救急担当医師として在院していた……被告の前記 医師(注:宅直の脳外科医師及び整形外科医師)ら不在は、被告病院の本件診療拒否の正当事由たり得ないとい うべきである。右病院では、本件連絡時脳外科及び整形外科の両専門医師が宅直で在院しなかつたにもかかわら ず、なお亡Aを現実に受入れても同人に対し施すべき医療は人的にも物的にも可能であつた、それにもかかわら ず、同病院は右両専門医師の不在を理由に本件診療拒否をしたとの推認を否定し得ない」。 • 「患者は、医師が正当な理由を有さない限りその求めた診療を拒否されることがなく診療を受け得るとの法的利 益を有すると解するのが相当・・・・・・亡Aは、被告病院に対し、右説示にかかる法的利益を有したところ、同人は、 同病院の本件診療拒否により右法的利益を侵害され精神的苦痛を被つたと認めるのが相当」。 神

医療法人

医療法人の設立には主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可が必要とされる(医療法第44条)

条文

成立は1948年7月30日(昭和23年法律201号)、施行は同年10月27日。

1条 医師の任務 医療と保健指導を司ることによって、公衆衛生の向上と増進に寄与し、国民の健康的な生活を確保する。

3条 絶対的欠格事由 未成年者は医師になれない。

4条 相対的欠格事由 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者、麻薬、大麻、あへん中毒、罰金刑以上の刑に処せられたもの、医事に関する犯罪、不正を行ったもの

6条 登録・免許証の交付及び届出 医師国家試験に合格した者の申請で医籍に登録されたもの、厚生労働大臣が免許を与えたときは免許証を交付する。

7条 医師の処分 戒告、3年以内の医業の停止、免許の取り消しの処分を厚生労働大臣から受ける。第7条の2の医業の停止を命ぜられ、当該期間中に医業を行った者は第32条の規定により1年以下の懲役または50万円以下の罰金または併科

11条 医師国家試験受験資格

15条 医師国家試験または医師国家試験予備試験における不正行為の禁止 第31条の規定により虚偽の事実、不正によって免許を得た者は3年以下の懲役または100万円以下の罰金または併科

17条 医師以外の医業の禁止 第31条の規定により3年以下の懲役または100万円以下の罰金または併科

18条 名称の使用制限 第31条の2の規定により3年以下の懲役または200万円以下の罰金または併科

19条 応招義務及び診断書交付の義務

20条 無診療治療等の禁止

21条 異状死体などの届出義務

22条 処方箋の交付義務

24条 診療録の記載及び保有 なお、業務上の秘密を守る義務(守秘義務)、虚偽記載、自殺関与、同意殺人、過失致死(傷害)、堕胎の罰は刑法が規定する

例外規定など

20条 医師は、自ら診察しないで治療をし、もしくは診断書もしくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、または自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

22条 医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者または現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者または現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合や、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。

  1. 暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
  2. 処方せんを交付することが診療または疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
  3. 病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
  4. 診断または治療方法の決定していない場合
  5. 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合
  6. 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
  7. 覚せい剤を投与する場合
  8. 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合

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Last-modified: 2022-10-10 (月) 13:36:00